仏教とは異なる、キリスト教式の香典返しの作法

仏教では、お香典を頂いたお礼の意味を込めて、香典返しを贈ります。キリスト教にも香典返しのように、不祝儀に際した返礼品があります。ただ、仏教とは異なる部分がいくつかあるので、今回は、キリスト教式の香典返しの作法について、ご紹介します。

キリスト教式葬儀にも香典、香典返しはあるの？

香典とは、お葬式に参列した方がお線香や抹香の代わりに供える金品のことで、仏式のならわしです。そのため、お香を焚く習慣のないキリスト教式の葬儀に「香典」という風習はありません。ただ、「弔慰金」と言って、香典に類似したものはあります。

香典返しも同様で、香典を受け取る風習のないキリスト教に「香典返し」という名目のものはありません。ですが「弔慰金」へのお礼をお渡しすることがあり、その場合は「返礼品」と言います。

キリスト教式の香典の相場

キリスト教式の香典の金額の相場は、仏式と同じと考えて差し支えありません。新札は使わないこと、２万円など一番上の位を偶数にしないことも同様です。

会社関係

• 上司や家族… 5,000～１万円
• 同僚… 3,000～１万円
• 部下… 5,000～１万円

家族

• 親… ５～10万円
• 兄弟姉妹… ３～10万円
• 祖父母… １万～３万円

友人関係

• 友人や家族… 5,000～１万円
• 近所の方… 3,000～5,000円

キリスト教式の香典の表書きの書き方

キリスト教式の香典の表書きとして宗派を選ばずに使えるのが「御花料」と「御霊前」です。キリスト教では、亡くなった方にお花を手向ける献花の習慣があるため、「御花料」という言い方をします。また、「御霊前」は仏式に限らずキリスト教でも使うことができます。ただし香典袋の封筒を選ぶ際は、蓮の花が描かれている仏式のものではなく、白無地のものにしましょう。

宗派が分かっている場合、カトリックなら「御ミサ料」、プロテスタントなら「忌慰料」と書いても構いません。

キリスト教式の香典返し（返礼品）を贈るタイミング

仏式の場合、香典返しは忌明けに贈るのが一般的ですが、そもそもキリスト教式には、忌中や忌明けという考え方はありません。では、キリスト教式の場合は、返礼品をいつ贈るのでしょうか。

そもそも忌中とは、四十九日までの期間のことを指し、「中陰」とも言います。仏教では、この間は、故人は仏になるための修行を行なう期間とされています。そのため、キリスト教式には、忌中や忌明けという考え方は当てはまりません。キリスト教式の場合、プロテスタントでは、人が亡くなってから１カ月後に召天記念式、カトリックでは、死後三十日目に行なわれる追悼ミサが行なわれるため、それぞれその後に返礼品を贈ります。

キリスト教式の香典返し（返礼品）の作法

仏式の香典返しでは、贈る品にのし紙を掛け、表書きを書いて贈りますが、キリスト教式の返礼品には、どのような作法があるのでしょうか。

のし紙に「志」「偲び草」「粗品」などと書く

キリスト教式も仏式と同様に、贈る品にのし紙を掛け、表書きを書いて贈ります。仏式では、表書きに「志」や「満中陰志」「粗供養」などと書きますが、キリスト教式の場合は、「志」「偲び草」「粗品」などと書きます。

「志」は、仏式でも、キリスト教式でも用いられているため、「志」には、「気持ち」という意味があり、お返しの気持ちということで、宗教問わず、用いられています。

お悔やみの言葉は不要

仏式では、葬儀などで、ご遺族にお悔やみの言葉をかけますが、キリスト教式の場合では、お悔やみの言葉はふさわしくありません。お悔やみとは、故人の死を悼むことを言い、仏教の教えに基づくことです。キリスト教では、死は、故人の永遠の命の始まりとして、不幸なことと位置づけていません。そのため、ご遺族に向けてかける言葉は、「安らかな眠りをお祈りいたします」と、言葉をかけます。

キリスト教式の葬儀は、仏式の法要とは異なる作法が多々あります。ただ、それぞれの宗教の習慣や作法について、理解を深めることは大切なので、しっかりと把握しておきましょう。